07 12月

大阪朝日新聞 和歌山版 昭和12年10月15日 稲むらの火は輝く

大阪朝日 和歌山版 昭和12年10月15日(金曜日)の記事より

05007

稲むらの火は輝く
郷土の義人浜口翁の巨姿
中井先生の作が読本に

この10月から改訂使用の小学校教科書5年用国語読本巻10に郷土色豊かな熊野紀行と稲むらの火の二つが新に登載されている。稲むらの火は有田郡広村村民を安政の津波から救った浜口梧陵翁(本名は儀兵衛であるが教科書には五兵衛となっている)の偉大な事績を記したものであるが、この稲むらの火の原作者が日高郡南部町南部小学校訓導中井常蔵氏(31歳)であることが漸く知れた。

中井訓導は有田郡湯浅町出身で県師範学校専攻科在学中、小泉八雲氏英語教科書の「生神さま」が母校耐久中学創立者で郷土の先輩浜口梧陵翁のことであるのに感銘していたが、昭和7年南部小学校に奉職、梧陵翁の事績が小学教育に最適の教材であると信じている矢先に文部省が新読本登載教材を全国小学校教員から募集したのでこれを好機として燃ゆる稲むらの標題で応募したところ9年4月5日入選発表、遂に本年改訂小学読本巻10の第10課に稲むらの火として採録されたものである。

中井訓導は「困りましたね、それが知れましたか」と謙遜して語る。

文部省の募集に応募して幸い入選しましたが、そんなことはもうすっかり忘れてしまい教科書に登載されるとは夢想だもしなかった、それが本月初旬教科書に登載されたことを知り身に余る光栄と存じております、私の微力により郷土の大先輩浜口翁の輝かしい事績が国民教育の教材となったことは全く怪我の功名であります。

(写真は中井先生)