15 12月

「稲むらの火」は、防災教育の名作

特別寄稿 「稲むらの火」は、防災教育の名作
小泉内閣メールマガジン 第172号 2005年1月20日
灘高等学校理事長  嘉納 毅人

先週号の「らいおんはーと」(注:小泉総理のメールマガジン)で取り上げられた「稲むらの火」は、昭和12年~22年に渡り、国定国語読本五年生に掲載され、多くの小学生の感動を呼んだ名作である。作者は、若き小学校教師の中井常蔵(28)であり、原作は文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が安政元年和歌山県広川町に起こった実話にヒントを得て書いた「A Living God」である。

この作品が再び注目されたのは、昭和58年の日本海中部地震津波により秋田の海岸で小学生12人の尊い命が奪われた時、そして、スマトラ沖の巨大地震による大津波により日本人を含む18万人以上の命が奪われた今回である。それも大半が逃げ遅れた幼い子供達とニュースは報じている。

明治29年の大津波で2万人以上の命が奪われた三陸地方では「津波てんでこ」即ち「逃げられる人から、てんでバラバラに自分の判断で逃げろ」との教訓が残っているが、「地震の後に津波が直ぐ来る」を知らない子供達が一番の犠牲になるのである。

戦前、戦後の10年に渡り、幼い小学校五年生を感激させる教材として「稲むらの火」が使われた事は、誠に的を得た教育であった。

私は作者の中井常蔵先生の「稲むらの火」普及のお手伝いを晩年の15年間した関係と防災教育の重要性、モデルの濱口梧陵への思いから、「稲むらの火」を更に多くの人に知って貰いたいと、多くの方々の協力を得て「稲むらの火」のホームページを平成13年11月に立ち上げた。これには「稲むらの火」に関する30編を越える著作、20の新聞記事、「A Living God」の原文等が300ページにわたり掲載されている。

ラフカディオ・ハーンの原作英文「A Living God」を世界の子供達に教えるお手伝いをする事も国際貢献の一つではないだろうか。

「稲むらの火」は、「地震の直後に津波が来る」を教える優れた防災教育の名作であると同時に「緊急時にリーダーたる者が何をすべきか」が書かれている。津波の来襲を知らせるために貴重な稲むらに火を放つと言う平時には決してやってはならない事を自己の責任で行ったのである。実話の主人公の濱口梧陵は、更に100年後の津波に備えて大堤防を和歌山藩に頼らず私財を投じて村人と共に建設した。

平成17年1月20日の小泉総理のメルマガへの投稿した文
総理府広報室の承諾を得て転載しています。